WORK ABOUT -BEAST HATE-
シルバーアクセサリーというジャンルに縛られる事無く様々な現場でクリエイティビティを発揮し、その結果をまたシルバーアクセサリーを創り出す事にフィードバックさせる。そんな他に類を見ないクリエイターである「高蝶智樹」の仕事を紹介しながら、様々な現場に於いても共通する高蝶の“WORK ABOUT”を見る。
-BEAST HATE-
「ストレートに強く響くプロダクト」を創り出す事を目的として、チームプレイによるクリエイションを「REFUSE」のメンバーで行ったが、活動期間10年を迎える事無く解散となったブランド。現在は製作されたピースやデザインの一部がANOTHER HEAVENなどで使用され受け継がれている。
個人のクリエイターは創作に於ける取捨選択を行う事が常となる。クライアントありきの仕事でもなければ特にそうで、自分から発信するブランドやクリエイションには常に取捨選択が必要となり、時には其れを見誤る事で大きな失敗を招きかねない。
漫画家に編集者やミュージシャンにプロデューサーが付く様に、(時にはそれが悪影響の場合もあるが)第三者の視点や俯瞰での捉え方に加えて冷徹な意見や新しい影響、そうしたクリエイションに必要となる要素を当事者として誰かが運んできてくれる事を望むクリエイターは少なく無いだろう。シルバーアクセサリーのクリエイターもそれは変わらない筈だ。
高蝶が「BEAST HATE」というブランドをそうした意図でスタートさせたか?と問うと応えは“NO”なのだが、チームプレイによるクリエイションに興じる部分は、ブランド発足の理由が当時のREFUSEスタッフ育成の為であったにしても少なからず在っただろう。
この「BEAST HATE」というブランドへ取り組むに際して用いられた手法が、毎シーズンのテーマとなるイラストを高蝶が描き上げメンバー間の意思疎通を計ったうえで制作に取り掛かるというものだった。個人として手掛けるブランドでは完全な独裁を振るわなければならない立場とは違い、共有と協議が常となるスタンスでのブランディングには判り易い“核”が必要だという理由だ。
加えて、ブランドのルックとは別にストーリーテリングにも似たシューティングを行い、その写真の為にスタイリングを考えアパレルをデザインしていく手法も採用されていた。今回は「BEAST HATE」というブランドで活動していた高蝶の“WORK ABOUT”を感じられるショットを紹介したいと思う。
チームプレイによるチームワークを経てブランドとして成長していった「BEAST HATE」だったが、徐々にメンバー間のモチベーション格差によるズレから、スタンドプレイによるチームワークへと変化しブランドのアクションは停滞気味になった頃、メンバーの一人が失踪する事態が起り解散を余儀なくされた。
結局は同種であれ異種であれ同等のレベルとモチベーションが無ければ、もしくは共感出来るアイディアを持っていなければ、スタンドプレイによって派生するチームワークは有り得ない。高蝶にとっては“苦い結末”を味わうブランド解散だっただろう。
しかし、この取り組み方が現在のLAのスタジオ「FAKTORY」での活動やKOMYとのリレーションシップで構築されている「ANOTHER HEAVEN」のアクションに繋がって行った事を鑑みるに、過去に構築し実践した“WORK ABOUT”は現在も活かされ続けている。