Exhibition Report: TAKAHIRO SUGIYAMA (dual flow) 10th Anniv.

苦節と開花が創り上げた10年の歴史

才能を引き出すには特殊な環境が必要になるものだ。苦であれ楽であれ振り返ってみて「あの時の自分」を今の自分にしっかりと繋げられるのは弛まぬ努力に他ならない。

杉山孝博 -Dual flow-10周年の記念展示会で並んだ作品の数々を目の当たりにして、そんな事を再認識させられると同時に革新と伝統を行き来しながら広がり続ける才能の渦を感じた。

当初“Vortex”という名前でブランドをスタートさせた時の杉山氏は若干18歳で、ある意味で鳴り物入りでのシルバーアクセサリー業界デビューを飾っていたが、5年を待たずして其れまでのデザインを捨て去って“Dual flow”としてブランドをスタートさせる。

「再スタート当初の売れない時期があったから良かった」杉山氏がそう語る裏には、苦節の中でもがく事が現在の自分を定めた確信が伺える。

      

     

年齢的にはシルバーアクセサリー業界で言うところの第五世代にあたる杉山氏だが、“Vortex”時代にはF.A.Lの山本氏やSTRANGE FREAK DESIGNSの古谷氏と競う様に業界を賑わせていた事もあり、「Dual flow」としての再スタート時に思う様に自分のブランドが受け入れられない事は大きな苦悩と焦りを感じさせた事だろう。

しかし、そんな中でシルバーアクセサリーだけに拘らず自分の好きな表現方法を学び、様々な人と出逢いながら自分の価値観を見詰め直してはまた表現していく事で才能は開花していく。

      

      

      

現在では、精巧で細密な彫金技術を如何無く発揮しながら、大胆な造形描写でトライバルに日本美術の伝統的なモチーフを組み合わせた作品は多くのフォロワーを生み、独自のセンスで渦を巻く様に描かれる真鍮版の彫刻や絵には革新性と伝統性が混在していて、国内のみならずアジア圏等でも高い評価を得ている。

苦節の時を経て開花した才能が、回転を読み取り軌道を操るかの様に発展していく杉山氏の作家性。この渦巻く才能が次の10年で何処までの高い領域に到達するのかが楽しみだ。

 

Dual flow http://www.dual-flow.com/catalog/

取材協力:ギャラリー白線 http://hakusen.jp/

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
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