Consideration: 加速するシルバーアクセサリー業界のイベント。

様々な業界で夏場のイベントやフェスは定番行事となっているが、7月22日は奇しくも都内の3箇所でイベントが行われていた。近年のイベントの増加と傾向を7月22日に行われた3ブランドのイベント写真と共に、ライブアクションによるシルバーアクセサリー業界の現在を紐解いてみよう。

 

一昔前という時間の単位は10年がその区切りになるそうだが、ライブアクションを主軸にしたシルバーアクセサリー業界のイベントは一昔前とはかなり変化してきている。

15年以上前まで遡ると、シルバーアクセサリー業界のイベントと言えば展示即売会に少しのカスタマーサービスが加わったミート&グリード的な、所謂デザイナーが展示された商品の説明をしながら着けこなし方を勧めてオーダーを募ったり、カスタマーネームを彫り込む程度のライトなイベントが主だった。

当時のシルバーアクセサリー業界ではイベントを打たなくとも集客や販売に苦労する事が少ないセレクトショップ等も多く、海外ブランドのデザイナーを招聘してのワンデイイベントを行えば、通常時の一ヶ月分の売上げが見込める程だったらしい。

そうしたライトなイベントが主だった業界の常識が、カスタムやワンメイクを実演してみせるリアルなライブアクション・ライブクリエイションへと変革が成されてから15年以上が経過し、昨今のイベント事情は新しい定番化を迎えようとしている。

最近のイベントで主流になっているのはオーダー&カスタムで、ブランドのレギュラーアイテムもしくはイベント用に制作されたアイテムやピースを使用して、カスタマーのオーダーに合わせてアイテムをビルドアップしていく手法だ。

F.A.L -Yoshiyuki Yamamoto- at F.A.L TOKYO

イベントでライブアクションを行うブランドの中でもベテランの域に達しているF.A.Lの山本氏のアクションは、ベースとなるアイテムに対して多数のカスタマイズ用ピースを盛り込み、ストーンセッティングを組み合わせてビルドアップしていく事を得意としているが、同時にエングレーブによってアイテムの表情を変化させる等の技術と引き出しの多さを見せる。

この日のイベントは12年目となるツアー「CROSS ROAD」の一環で、自らのフラグシップショップ「F.A.L TOKYO」で行われていたが、今までにこなしてきたイベントで培った経験が工具や制作の進め方をシステマイズしていて、イベントに於けるカスタマーとクリエイターの関係性に最適化を感じさせるものだったし、長く続けているからこそのトライ&エラーが完成されたアクションを生み出しているのが如実に伝わってくる。

 

F.A.L http://www.fal-d.com/

F.A.L TOKYO http://www.venomglow.com/tokyo/

 

Mad Graffiti -憂-  at SILVER SHIELD

新作のリリースに伴って三度目のツアーとなったMad Graffitiのユウ氏がイベントを行っていたのは原宿の「SILVER SHIELD」。8月1日から名古屋の「Gallery Venom Glow」を引き継ぐカタチでフラグシップショップとしてスタートさせたMad Graffitiにとっては遠征という事になるが、落ち着いた表情と作業の進め方からはライブアクションへの場慣れ感が漂う。

事前の仕込みを抜かり無く行って組み上げていくワンメイクがこの日のアクションとしてはメインだった様だが、オーダー&カスタムに合わせたセッティングもされておりカスタマーの要望にも応えつつ新作をベースにしたワンメイクを楽しんで貰おうという趣旨でライブアクションを決めていた。

 

Mad Graffiti http://www.mad-gr.com/

SILVER SHIELD http://www.silvershield925.com/

 

 

GLAM SCALE –Seiya Hiyama- at SILVER GEEKS

都内のセレクトショップでも比較的イベントが多く行われている「SILVER GEEKS」では、GLAM SCALEの12周年イベントとして日山氏がライブアクションを行っていた。ブランドのアニバーサリーという事もあってオーダー&カスタムを次々とこなすよりは、ミート&グリードに重きを置いた感じだったが、それも日山氏の人柄や会場となったSILVER GEEKSのショップスタイルに拠るところが大きいのだろう。

元々は栃木県で「EXXX」という工房を併設したショップをメインにブランド活動をしていたGRAM SCAREの日山氏だけにカスタマーとのやりとりでライブアクションを変化させていくのもお家芸的な馴染みを感じさせてくれて、出来上がったアイテム抜きで日山氏の一挙手一投足を見るだけでも楽しませてくれる。

 

GLAM SCALE http://glam-scale.com/

SILVER GEEKS https://www.stfreak.com/geeks/

 

ライブアクションが増加していくシルバーアクセサリー業界ではあるが、15年も前から現在まで雑誌等のメディアがプロモーションに協力する事も、イベントに足を運びレポートする事も広告掲載する以外には殆ど見られないのが現状だ。コンテンツの魅力に対してアクションを起せないのは愚の骨頂と言わざるを得ないが、これも悪しき慣習というべきだろう。

そうした業界の状況下で、シルバーアクセサリー業界で言うところの第四世代・第五世代は精力的にツアーやイベントを行い、ローカルプロモーションと共にイベントに来てくれるカスタマーをどう満足させるか?を突き詰めた結果がオーダー&カスタムを主軸としたイベントスタイルになってきている。クリエイターが好き勝手に物創りをするライブアクションが減少して、よりシステマイズする事でカスタマー満足度を高めたイベントを行おうとするブランドに対して、開催するセレクトショップ側はどう対応していくのだろう?

ビジネス的な条件は別にしてもイベントに於ける環境作りがセレクトショップ側に求められるのは当然となりそうだが、ブランド側のイベントコンテンツが進化しているのに対してセレクトショップ側はSNSの発達を除けばセッティングやプロモーションには10年以上目新しさを感じない。

それが業界的に定番的な良さなのかどうかを判断するのは難しそうだが、イベントに集客や売上げを期待して開催するのならば、ブランド毎に最適化されたセッティングやプロモーションを用意して呵るべきだろうし、今後のシルバーアクセサリー業界に於けるイベント発展の鍵は其処に在ると思うのだが、現状打破は為されるのか?と共にブランド毎に違う発展を遂げていくイベントに今後も注目していきたい。

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

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